新古書店研究
はじめに
第1章 古書流通の〈ニューウェイブ〉
第2章 新古書店が標的にする市場
第3章 新古書ビジネスの実像と将来
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■2006年 4月2日
新古書店研究を掲載しました。
■2006年 4月2日
Laboページを制作しました。
共同研究の申し入れ、単行本化のリクエストは常時歓迎いたしますので、public@fbook.com宛にご連絡ください。あるいは、TOPページに掲載しました連絡先宛にご連絡いただくのでも結構です。
1998-2001ごろ執筆(未完成・未発表)
江下雅之
(未着手)
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早川書房から「宇宙英雄ローダン」という翻訳SFが刊行されているが、ドイツ生まれのこのシリーズ、史上最長の本としてギネス・ブックにも登録されている。これが日本で翻訳され始めたのは一九七〇年のことで、当時、早川SF文庫から出た第一巻『大宇宙を継ぐ者』は二二〇円で買えた。一九九九年六月には第二五〇巻『虚無より来たる』が同じく早川SF文庫から刊行されたが、そちらは五四〇円、第一巻初刷の約二・五倍なのだ。
「文庫本は安いもの」と思ってはいても、すでに二冊買えば千円札一枚では足りない。なかには千円近い値段の文庫本もあるし、新書ノベルスとなると八〇〇円以上があたりまえだ。
もちろん、三十年近い年月のあいだ、本だけが物価上昇を免れているわけではない。昔に比べて高くなったところで、それ自体はなんら不思議はない。
ところで、新刊の本や雑誌は一部の例外を除けば、どの書店でいつ買ってもおなじ値段である。そんなことは常識だろう、と言いたい人もいるだろうが、これは商品販売では相当特殊な状態なのだ。食料品にしても家電製品にしても、店によって値段が違うのは当然である。スーパーの鮮魚売場では閉店前に値を下げるし、パソコンは新機種の発表が近づくと、一気に価格が低下するものだ。そもそも小売されている商品とは、店によっても買う時期によっても、値段が違ってあたりまえなのである。
じつは書籍や雑誌に関しては、再販売価格維持制度、通称「再販制」という特別な流通慣行のもとで販売されている。これはいわゆる定価販売制度であり、本来なら独占禁止法で禁じられている行為なのだが、一部の商品については例外的に認められている。その一部の商品のなかに、書籍や雑誌が含まれている、というわけである。
九〇年代の規制緩和の流れのなかで、再販制に対しても、何度も見直しを求める議論が公正取引委員会でも行われてきた。再販制の功罪をめぐっては、いろいろな意見も出ているが、再その内容や流通上の問題点などについては、第2章であらためて紹介したい。とりあえずいまのところは、新刊の本や雑誌はどの書店でいつ買ってもおなじ価格で、定価よりも安く買う方法は、古書店のルートしかないということを覚えておいてほしい(*)。
新古書店の急増で、街の小さな古本屋さんが確実に減少しているように感じる。それはちょうど、コンビニの増加で乾物屋だの文房具屋などの小売店が消えていくのとおなじだ。
一定のサービス水準を本部から購入するフランチャイズ・チェーン店というのは、たしかにやる気のない小売店に比べればはるかに機能的だしサービスも豊富だ。しかし、小売店が続々とコンビニやリサイクル店化するというのは、とても味気ない。とくに古書店には多かれ少なかれ店や客のこだわりが必要だと思うので、本来ならフランチャイズ化が向かないはずである。にもかかわらずブックオフなどが増えているというのは、逆にいえば、本に強いこだわりや愛着のない消費者が増えていることのあらわれかもしれない。