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別冊宝島494 お宝コミック・ランキング(宝島社/発行)
2000年3月25日発行 pp.25掲載
江下雅之
マンガ雑誌の付録にマンガが付いている――今の読者からすれば奇妙きわまりない現象が、昭和三〇年代にはごく普通のことだった。週刊雑誌がマンガのおもな媒体として定着したのは昭和四〇年以降のことだが、そこに至るまでには、書き下ろし単行本から月刊誌、そして月刊誌から週刊誌という移り変わりがあったのである。
月刊誌では一人の作家に八ページ程度が割り当てられるだけで、連載頻度が月ごととなると、表現の内容がどうしても限られてしまう。そのために、読み切りの短編が付録の形で付いてきたのである。
昭和三〇年代半ばごろには、月刊誌による付録マンガ競争が発生した。きっかけは、昭和三五年前後に続々と週刊漫画誌が創刊されたことだ。週刊誌ならば、個々の回では八ページでも、月刊では三〇ページ以上を掲載できることになる。それに対抗するような形で、月刊誌も付録で読み物を増やそうとしたのであった。
この付録、版型はB6判が中心で、安っぽい紙に印刷されたシロモノがほとんどだ。見るからに「読み捨て」を前提にした感じが漂ってくる。もちろん、なかには例外があって、ハードカバー製本のもの、角判のもの、数冊が函やビニールに詰め込まれたもの等々がある。また、昭和四〇年代半ばごろの付録マンガには、製本も平綴じで表紙もしっかりとしたデザインがなされ、ちょっと薄目の単行本といった雰囲気を持ったものもあった。
しかし、もともとマンガ雑誌自体が読み捨てられたものであり、付録マンガもまた、本棚に整理して置かれることを想定したものでは到底なかったことは明らかだ。結果、多くの付録マンガは捨て去られ、いまとなっては貴重な存在となったものが少なくないのである。もちろん、たいして値のつかない付録マンガも数限りなくあるが。
雑誌にくっついてくるものといっても、もちろん作品が貧弱だったわけではない。手塚治虫のヒット作『鉄腕アトム』とて、雑誌付録で多くのエピソードが描かれている。横山光輝の代表作『鉄人28号』など、最初のストーリーは雑誌ではなく付録で登場したくらいだ。
杉浦茂、桑田次郎ら、昭和三〇年代の大人気作家の多くの作品も付録マンガで付いてきた。藤子不二雄の場合、マンガ業界の主力媒体が月刊誌へ移行した時期に人気の拡大期が重なったため、数多くのヒット作が付録マンガで生まれることとなった。それが現在、藤子不二雄のお宝コミックが付録マンガに多い理由となっている。
そうした人気作品の一部は、朝日ソノラマのサンコミックスや秋田書店のサンデーコミックスなどから単行本化された。もちろん、雑誌の版元が自社ブランドの単行本として出す場合もあった。短編集とか傑作選などと銘打たれた単行本の収録作品には、かつて付録マンガとして世に出たものが含まれていることがある。
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