「France News Digest」(France News Digest/発行)
江下雅之
世論調査機関CSAの事前調査によれば、98年9月末にリセ教師が予定しているストを支持する人は、回答者の45パーセントだった。不支持または反感を抱いた者が24パーセント。この結果に対し、週刊誌L'Evenement du Jeudi誌は「(支持は)わずか45パーセントにすぎない」という評価を下している。
たしかにこの支持率、過去のどのストに比べても低い。97年11月のトラック運転手のストは、80パーセント近い人が支持していた。フランス全土が麻痺した95年10月のゼネストでさえ、62パーセントの回答者が「支持または理解」していたのである。
しかし、45パーセントという数字でも、日本人的感覚からすれば随分と高い。そもそも日本社会なら、ストそのものが社会の迷惑であり、自分勝手な行為を考える人が多いのではないか。
たしかにストが実施されれば、多くの人が不便を強いられる。この状況は、日本だろうがフランスだろうがかわりはない。ストの頻発するパリでも、メトロが突然止まれば車内のあちこちから「Merde !」と聞こえてくるものだ。
ここで一つ考えないといけないことは、誰の迷惑にもならないストなど、ストとしての意味をなさない点である。社会の迷惑だからこそ、争議相手へのプレッシャーとして機能するのである。
迷惑への抗議の矛先が、日本ではストを打つ当事者に向かい、フランスでは経営者の方に向かう。圧倒的多数のフランス人にとって、ストとは「雇用されている」立場にある者共通の関心事である。「おなじ利用者・消費者」という前提に拠って立つ日本人的感覚とのギャップは、この点にこそあるのだろう。前述の「45パーセントにすぎない」という評価は、件のストに対し、フランス人から「同じ立場の出来事」とみなされていないことを示している。
■多面鏡
|
週刊新聞、France News Digest社/発行、1990年創刊
フランス在住の日本人向けに無料配布されている日本語の週刊新聞である。インターネットがまだ普及していなかった時代、OVNI、Jeudi Paris-Tokyoとともに、在フランスの日本人にとって日本のニュースを知るとともに、ヨーロッパのニュースを日本語で知るための貴重な情報源であった。
ニュース以外には個人情報を掲載する欄があり、帰国売り、アパートのバカンス貸し、ベビー・シッター募集などの情報が載っていた。在仏日本人の生活情報誌でもある。
なお、発行は週刊だが、わたしのコラム連載は隔週であった。