新書判マニア御用達の指定銘柄

別冊宝島494 お宝コミック・ランキング(宝島社/発行)
2000年3月25日発行 pp.32-33掲載
江下雅之

作品ではなく本が収録されているシリーズ自体に、マニアの人気が集まることがある。こういうブランドが「お宝」の産地にもなっているのだ。

トップブランドの虫コミとサンコミ

「懐かしのマンガ」ファン御用達のトップブランドになっているのは、虫プロ商事の虫コミックスと朝日ソノラマのサンコミックスだ。
 虫コミックスは全一八八巻で、古書店によっては全巻揃いを売っていることがある。値段は二五〇万円以上だ。いわゆるトキワ荘グループの作家たちが昭和四〇年前後に描いたヒット作が、ほぼ満遍なく収録されている。藤子不二雄の代表的なヒット作、『オバケのQ太郎』『パーマン』『シルバークロス』はもちろんのこと、赤塚不二夫、石森章太郎、つのだじろう、寺田ヒロオらの作品が多数含まれているのだから、懐漫ファンにはたまらない。ほかにも横山光輝、水木しげる、ちばてつや、松本零士らの現役巨匠をはじめ、関谷ひさし、永島慎二、久松文雄など、昭和四〇年前後に人気のあった作家の本もある。マンガ史的にも虫コミックスは貴重な存在だ。
 サンコミックスの方は、平成元年まで新刊が出ていた。総タイトル数は九〇〇巻以上あるが、それでも全巻を揃えようとするサンコミ・コレクターは少なくない。
 虫コミックスと同様、サンコミにも懐漫ファンお気に入りの作家の本が多数収録されている。とりわけ水木しげる、石森章太郎、永井豪、松本零士の作品収録数が多く、これらの作家のファンにとって、サンコミの魅力はいやがうえでも大きい。ほかにも、桑田次郎、永島慎二、水野英子、西谷祥子など、昭和四〇年代に人気のあった作家の主要ヒット作が含まれている。また、竹宮恵子、大島弓子、山岸涼子、伊藤愛子、山田ミネ子など、いわゆる「二四年組」の初期ヒット作がまとめて収録されているため、少女漫画ファンにとってもサンコミは必須ブランドだ。

それ以外のマニア御用達ブランド

 大手出版社のなかでは、講談社のKCにブランドとしての人気がある。講談社のコミックコードは少し複雑で、最初はすべてKCで統一されていたが、途中から少年コミックはKCマガジンに、少女コミックはKCフレンドなどに分かれた。そして古いKC――少年コミックならKC1からKC405まで、少女コミックならKC501からKC589(KCフレンドシリーズ)は、昭和四〇年代のヒット作が多数収録されていることと、初版がきわめて流通量が少ないことから、ひとつのブランドとして人気がある。
 なかでもKCフレンドシリーズは、全体でも八九巻しか出ていないので、少女コミックコレクターの標的になっている。作品の一部はKCフレンドとして再収録されているが(たとえば大和和紀の『モンシェリCoCo』)、KCフレンドシリーズ版の方が圧倒的にマニア人気は高い。
 そのほかに、倒産した若木書房が、現在は「若木人気」とでもいうようなブランド性を持っている。とりわけ絶対数の少ないジュニアコミック、ティーンコミックスは、マニアのあいだで争奪戦になっているところだ。
 双葉社のパワーコミックスは、モンキー・パンチの『ルパン三世』が看板だが、サンコミの「復刻版」が多数収録されていることでも人気がある。
 マンガの出版では歴史のある秋田書店・少年画報社でも、サンデーコミックス、キングコミックスといったマニア人気の高いブランドがある。講談社や小学館が自社ブランドの新書判コミックを刊行する以前は、少年マガジン、少年サンデーのヒット作は秋田書店のサンデーコミックス(通称「秋田サンデー」)で単行本化されることが多かった。そのために、古い秋田サンデーもサンコミと同様、懐漫ファンの人気が高い。
 少年画報社にはヒットコミックス、キングコミックスの2ブランドがあるが、後者の方がタイトル数が少なく、流通量も少ないため、コレクター人気はキンコミの方が高い。藤子不二雄の『怪物くん』、山根あおおにの『おやじバンザイ』は特に人気がある。


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別冊宝島494
お宝コミック・ランキング
宝島社
2000年3月25日
840円
4色カラーの豊富な図版で多数の稀覯本を紹介しています。

図 版

「オバケのQ太郎」全12、藤子不二雄、虫プロ商事MC 「鬼太郎のベトナム戦記」、水木しげる、朝日ソノラマSCM
「モンシェリCoCo」全3、大和和紀、講談社KCフレンドシリーズ 「さすらいの太陽」全4、すずき真弓・藤川桂介、若木書房TCD
「ルパン小僧」全2、モンキー・パンチ、双葉社PC 「怪物くん」、藤子不二雄、少年画報社キンコミ

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