21世紀の日記 |
|
20世紀の日記 |
|
93年2月の日記は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラム・フランス語会議室」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。
当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。
最後にグランゼコールの学位について補足します。
グランゼコールも1〜3CYCLE に分かれています(たいてい各1年。GEによっては2eまで)。ただし、GE入学までに準備学級を最低2年は履修しておりますので、1er CYCLE が大学の2e CYCLE1年に、2e CYCLEが同2年に相当します。各GEで規定されたプログラムを無事修了すると、晴れてその学校のディプロム修得となります。
前述の様にGEのディプロムはあくまで各校独自のものですが、1986年にグランゼコール協議会の申し合わせによって「Mastere Specialise」という共通ディプロム履修コースがGEの3e CYCLEとして開始されました。私が履修しているのが実はこれです。
MSはまだ認知度が低いため、GEは基本的に2e CYCLEで終了と見るのが一般的です。ただし、MS以外でも大学の暖簾を借りる形で3e CYCLEのコース、すなわちDEAやPost DEA コースを設けるGEもかなりあります。例えば私が所属しているESSECには5つのMSコースがあるほか、Aix-Marseille III大学との共通ディプロムという形でDEA 及びPost DEAコースが設けられております。修了者はあくまで「ESSECのDEA修了」という形になります。
有名GEのディプロムは多くの場合Maitriseと同格に扱われますので、自動的にDEA やDESSへの志望が可能になります。なお、GEによっては他のGEのディプロムを入学条件にしているところがあります(例:ENA )。従って、現象として「GEのはしご」という現象がまま見られるそうです。因みにポリテクニック+ENA の組み合わせは究極のエリートだそうです(確かポンピドーだかジスカールはこの口)。
何にせよ、GEの場合は学校のブランド性が大きくモノをいいますので、むし大学事情に似ているといえましょう。私立も結構多いので、かえって日本との比較が用意かもしれません。
前のアップで書き忘れましたが、この部分のタネ本は級友が貸してくれた小冊子「Universites Mode d'emploi」でございます。
ディプロムの繋がりをご説明すると共に、CYCLE について触れておく必要があるでしょう。これがフランスの大学制度を理解するための鍵になります。
まず、1er CYCLE。これは日本の一般教養課程に相当します。フランスの一般の大学に進学すれば、この課程修了とともにDEUGが得られます。工業系の短期大学Institutに進む場合にDEUSTを得ることになります。DEUGを獲得した学生は2e CYCLEへと進みます。ここでは専門によって修得可能ディプロムが異なりますが、簡単にまとめると次のようになります。
文学 :Lisence(1年)、Maitrise(1年)
理学 :(idem)
法・経:Lisence(2年)
技術系:MIAGE(2年)、MSTまたはMSG(2年)、Magistere(3年)、Diplome d'ingenieur(3年)
(注)Magistere及びDiplome d'ingenieurはDEAと同格
2e CYCLEの位置づけは「基礎的な専門知識の修得」とされておりますので、研究者を目指そうと思わない人はこれがゴールとなります。因みに日本の学士号を持っている留学生は、原則として2e CYCLEに編入することになります。
3e CYCLEは研究者育成のためのコースと位置づけられます。Maitrise(MST、MSG、MIAGEを含む)を修得した学生は、DEA またはDESSコースに進むことができます。MagistereまたはDiplome d'ingenieurを修得した学生はPost DEA、すなわちDoctoratコースに直接進むことができます。
DoctoratにはDESSからも進むことができます。ただし、DEAが一般にDoctratの登竜門とされているのに対し、DESSは特定分野の高度な専門性を修得するためのプログラムと考えられているようです。研究者を目指す人はDEAを経てからDoctoratに進み、DESSは上級専門職を目指す人のコースといえましょう。むろん、専門分野によってはDESSからDoctoratというコースもいくらでもありえます。
日本で修士号以上を獲得している人はDEAの履修が可能です。また、研究機関や企業での実務が3年以上ある人なら学士号のみでも受け入れられるケースがあるようです。その他の場合も、プログラムの指導教授との交渉次第では可能なようです。
フランスの高等教育がいわゆるアカデミック・スクール(大学、大学院)とプロフェッショナル・スクール(グランゼコール)に分かれていることは、この会議室であればある程度既知であろうと思われます。本来、大学は研究者を育て、GEは企業幹部や役人を育てるところという前提の元、それに応じた学位の授与やコース設定がなされておりました。しかし、学際領域の進展や産学共同研究などの進展によって、大学とGEとの交流が盛んになり、現在ではGEでもドクターコースを設けたりしています。
この辺の事情は次回に譲るとして、まずは大学で獲得できるディプロムをご紹介致します。
まあ何はともあれ次の用語を頭に叩き込んで下さい。これらが大学/大学院で修得可能なディプロムの一覧です。
DEUG : Diplome d'etudes universitaires generales
DEUST : Diplome d'etudes universitaires wcientifiques et techniques
Licence
Maitrise
MIAGE : Maitrise d'informatique appliquee a la gestion
MST : Maitrise de sciences et techniques
MSG : Maitrise de sciences de gestion
DEA : Diplome d'etudes approfondies
DESS : Diplome d'etudes superieures specialisees
Magistere
Diplome d'ingenieur
Doctorat
仏和辞典の巻末に多少の仕組みなどは載っておりますが、実際はこれだけあるのです。凄まじいでしょう? これらのつながりや内容は次の書き込みでアップします。
なお、GEの場合は各学校がディプロムを授与しますので、どのGEのディプロムを持っているかが極めて重要となります。ポリテクニックやENA を頂点とするトップ6のディプロムはフランスにおいて万能の威力を発揮しますが、それなりのところはGEといえどもそれなりの扱いとなります。この辺りも話せば長いので、また後で詳しく述べましょう。
24日の夕方に定刻通り帰国しまして、たった2週間の間に随分と日が長くなったことに驚かされました。翌日の朝も7時前には明るくなっていたし、あと1ヶ月後には早くもサマータイムでございます。
日本滞在中はすっかりとアキバ通いのガイジンと化し、Mac の内蔵用ハードディスク、Phone Talk、バルクのフロッピー、そして電子手帳プラス仏和・和仏ICカードなんぞを購入いたしました。これらはパリで買うと悉く倍はしますから、これだけで航空運賃の元が取れたやうなものであります。さらに米国の通信販売でMac 用のアクセラレータDayStarの68030/40MHzを購入しました。おかげでオールドファッションMac IIはIIfx並みのパフォーマンス、System 7も無理なく作動しそうです。
電子手帳はM田さんに見せて頂き、えらく感動したものです。早速アキバのス*ップに直行したのですが、お目当てのシ*ープ PA-9550はちょうど売り切れ、しかも入庫予定なしでした。第*家電ではPA-9500 が約29K、これで手を打とうと思ったのですが、肝心の仏和・和仏ICカードが在庫なし。それで半ば断念しつつも帰りのついでにステ*プ近くの石○電気に行ったら、実に PA-9500が22K、PA-9550 も29Kでございました。これってステッ*価格と1.1Kしか違わないのです。ICカードもあったので、即購入致しました。詳しいレポートはいずれするとして、この辞書の威力は常時携帯用としては相当の優れモノであるといえましょう。
このような技術ネタはついつい比較したくなるもの。今話題のクラウン仏和CD-ROMと比べて、なんて話に行ってしまいそうですが、私はICカードとCDとでは用途の棲み分けがなされるような気がします。そんなわけで、電子辞書をどのように使いこなすかなんて話題は、大いに盛り上がってほしいところでございます。この電子手帳、早速学校でも披露して参りました。辞書よりも手書きメモが受けまくっておりましたよ。
皇太子ご婚約以来、女性の間で再び留学熱が高まっているとか。実際に留学中の私が言うのも変ですが、「留学」自体の価値がそれほどのものではなくなったのは事実でございましょうし、「留学」が「国際感覚」を育むとは思えない。第一「国際感覚」なるものの実態や意義に、私は極めて不可解かつ懐疑的印象を抱いております。
とまあひとくさりしてはみたものの、人生の機会をどう生かすかは個人の問題でございましょう。「留学」も一つの機会でございます。機会として多くの選択肢を供給してくれる、私もその事実を否定する気はございません。
さて、日本で留学と言えば英語圏、それも事実上アメリカの大学/大学院に学というのが実態でございましょう。フランス留学というとどうしても語学学校とか料理やモードの専門学校の需要が多いらしく、一般の大学などの高等教育機関に留学を志す場合、情報らしい情報がないといっても過言でないでせう。現に私もえらく苦労しました。
本や雑誌だって、需要がなければたいした情報も提供できないのも無理からぬもの。従って、情報入手先は財団や大使館だけが頼りとなってしまう。私の場合は学校に日本事務所があったので何とかなりましたが、そうでなかったら、情報収集段階で挫折していたかもしれません。
まあ、能書きはさておき、とにかくリアルタイムで情報交換ができるというパソコン通信は、このようなマイナーでありながら一部では根強い需要のありそうなメディアとしては最適であるように思われます。そこで、そろそろネタ切れの見えてきたLexiqueシリーズに変わって、今度はフランス留学講座なるものを行ってみたいと思います。
この会議室には私よりも留学経験の長い方が多々いらっしゃいますので、適宜アドバイス、ご意見、茶茶入れ等をしていただければ幸いです。一応、次のような構成で数回に分けてアップして行きたいと思います。
(1)学位 :ディプロムの構成や教育制度
(2)手続き:各種手続きの主として裏技(?)
(3)語学力:実際に必要な語学レベル
相変らずグレーですが、私の日本滞在中、2度雪が降ったさふです。でも本当、日が長くなった。そういえば、昨日当たりまた三日月と宵の明星の組み合わせが見られましたね。12月に凱旋門の上から眺めたときよりも、金星が大分空高くかかっておりました。
定刻より僅か15分遅れで無事到着しました。今日は旗日だったのですね。どうりで帰りのリムジンがすいていると思った。
実家に着いてから一通りかたずけ物を済し、さあアクセスしようとしたら、恥しながらまったくアクセスが不能、モデムが接続されるところまではよいのだけれど、そこから先がウンともスンとも言わない。冷静になって考えてみたら、@PとかC NIF をせにゃならないことを思い出し、あわててオートパイロットを設定仕直した始末です。
接続前には近くのロー*ンまで雑誌の立ち読みに行ったのですが、握り飯を思わず買ってしまった。機内食で満腹なのに。パリでは米こそ安く手に入るものの、梅干し、そして特に海苔は贅沢品でございます。ローソ*ズのパックおにぎりだけど、何やら久々に贅沢したような気分になってしまった。
とうとうカミさんに風邪を移されてしまい、昨日今日と学校を休んで療養に励んでしまいました。12日のオフではフランス産のインフルエンザ持参となるやもしれまへんので、皆々様、くれぐれもご用心。成田で検疫に引っ掛かったらどうしやう。(;_;)
帰国に際しては当然モデム内蔵PB持参ですので、11日夜には再びアクセス可能状態になると思います。久々にRTざんまいに浸れると今から変な楽しみにドキドキしております。
最近、めっきりと日が長くなったと実感しています。確かに冬のパリは晴れの日が少ないとはいえ、明るい時間がかなり長くなったのは事実。1月は朝家を出るときは当然夜明け前、冬至のころなど、セルジーに着いた頃ようやく日が出始めたといった感じです。一度だけ、デファンスの新凱旋門の中に太陽がすっぽり収まった光景を目にしたこともあります。最近は家を出るとき既に夜がしらじらと明けている。
私はパリには専ら5月とか8月に来ていました。だから今のように日々暗い季節でもあの太陽さんさんの日々を楽しみに待つことができるのですが、カミさんの方は初めてのパリが一昨年のクリスマス、そして2度目の今回が11月。太陽のない季節ばかり。そんなわけで、今はひたすらお天道さまが恋しいようであります。
そういえば、古事記の天の岩戸伝説は、日蝕ではなく冬至の頃に太陽の再生を祈る習慣から来ているとか。更に余談ながら、昨夜たまたまTF1の「Cine Dimanche」なんぞを眺めていたら、ベッドで絡み合っていた男が突然立ち上がり、オ*ンチン丸出し。あれだけ堂々と映されると、かえっておかしくなってしまう。尤も私には同性のオブジェを眺める趣味はないのだが。
ごくごく単純に、
お名前頂戴できますか? :Votre nom (et prenom), S.V.P?
旧姓を頂戴できますか? :Votre nom de jeune fille, S.V.P?
お電話番号頂戴できますか?:Votre numero, S.V.P?
ご住所頂戴できますか? :Votre domicile, S.V.P?
身分証明書をご提示頂けますか?:Votre piece d'identite, S.V.P?
なんて思ってしまうのでございます。ちと日本では通用しないものに、
Votre NSS, S.V.P?(NSS : Numero de Securite Sociale)
社会保証番号を頂戴できますか。
というのもあります。欧米では統一された社会保証番号があり、それが悪く言えば国民背番号、実利的に言えば身分保証の証として利用できる。日本でも数年後には統一番号が出来るでしょうから、いずれ同じように身分保証として使う状況が訪れるでしょう。「L'ecume des jours」風の尋ね方として、次のようなのはいかがです?
J'ai l'honneur de solliciter de votre autorisation de me mettre en situation de connaitre votre nom...
アリアンスに通っていた頃、イタリア人やスペイン人の辞書を覗いて本当に左右同じ単語が並んでいたのに茫然。私、上級のクラスに編入させられてしまったので、語彙力の差を歴然と思い知らされました。因みに、中級以上のクラスで日本人は概して「中の下」くらいのレベルだそうですが、テストをやると途端に「上の中」になるらしい。これは語彙力の影響だそうです。テストだとある程度限定された語彙の世界ですから、ここでは日本人の知識の正確さが優位になるらしい。
アリアンスは入学時にペーパーテストでレベル分けをするのですが、ここでもたいてい日本人は好成績を収めるらしい。だから、いざ授業がスタートすると、周囲の会話スピードについて行けないケースも多いそうです。反対に、日本人生徒から見ると、「何でこんなに喋れる人が初級なのぉ?」ってケースも多々あるとか。ところが試験で紙に書くという段になると、スペルは目茶苦茶、活用も出鱈目とあって、「やっぱりこの人も初級なんだ」と納得とか。
どうもこの辺は、同じ印欧語の民族が言葉を自国語との類似性に基づいて感覚的に覚えたり、あるいはまず耳で覚えるのに対し、我々は知識として覚えざるをえない、という違いがあるような気がするのです。私の教師が語っていたことには、ネイティブ並みに喋れるくせに書かせるとダメというタイプはスペイン、ポルトガル系に多い、反対に、たいして喋れないけれど知識は正確というタイプは日本人や韓国人に多い由。
ところで、イタリア人の友人はフランス語はそれほど難しくないと言っていましたが、フランス人の友人はイタリア語は難しいと言っておりました(複数の証言あり)。これは言語の問題なのか、それとも国民性の問題なのか、何て思わず悩んでしまった。
今年は難しい。春頃までにはまだ何年かパリに残れるか、あるいは秋に本格帰国しなければならないかが決まるでありましょう。困った困った。だから、安宿を確保されたい方は、なるべく夏までにご訪問下さい。
鼻母音の特訓はアリアンスの夏期集中講座でも特訓させられました。その時間が終わった後、とにかく頬がひくひくと筋肉痛を起こしていたことを覚えています。方法は簡単で、次の数字をひたすら読む。
105、505、150、550、155、555、...以下繰り返し
あとは、「intention」だの「on」の混じった例文の絶叫です。ソルボンヌのテキストにかような特訓用例文が揃っているそうです。
コミュニケーションの先生によりますと、東洋人は唇の動きが少なすぎるとのこと。確かに唇を積極的に使うと-inや-anの区別は案外スムーズに出来るみたいな気がします。鼻母音なのに唇を気を付ける、というのは盲点かもしれませんね。また、腹式呼吸を意識して積極的に息を利用することで、発音が楽になるようです。こうなると、「健康のためのフランス語」ですね。
ついでながら、「こりゃ見事!」「やった!」の口語的表現としては、
Ca, c'est ingenieux!
がよく使われます。ですから、冒頭の部分は口語的表現では、
Tu vois ce que je veux dire? Ca, c'est ingeniuex!
というような感じになります。 C'est marrant?
たまたま学食でバレンタインデーの話題が出た。フランスでも恋人の日、ということで、恋人がプレゼントする習慣があるそうである。ただ、贈るのは必ずしも女の方からとは限らないと私の周囲は語っていた。ましてやプレゼントはチョコとは限らないとのこと。
パリ出発まで一周間を切ったので、今日は飛行機の予約再確認をしました。学校から*韓航空のパリ事務所に電話をかけたのですが、...。
こっち:Allo?
あっち:Bonjour, Ko*ean Air, je vous ecoute.
こっち:Reconfirmation de la reservation, S.V.P.
あっち:Oui,..., la date du depart, S.V.P.
こっち:Euh..., 10 fevrier,... de Paris a Tokyo.
あっち:O-namae wo cho^dai dekimasu ka ?
こっち:....Eshita to mo^shimasu...
やはり*韓航空でパリに来る客は圧倒的に日本人が多いのかな、と改めて思ってしまった。
小生もロワシー空港が大好きであります。あのバカでかい空港が現在も拡張中というから驚きですね。完成すると成田の7倍の規模になるそうです。
それにしても冬のパリ−東京往復は凄まじく安いですね。パリの日系旅行代理店で入手できる往復チケットは、一番安いものでも6500FF位です(約15万円)。夏のピーク料金と大差ないのに驚かされました。尤も、日系以外の旅行代理店だと12.000FF位(エアフラ)するという話しをMarie-Pierreの友人から聞きました。一体、どういう仕組みになっているのだらう?因みに6500FFはKEです。
最近、AOMでもパリ−東京往復のオープンチケットを扱うようになったのですね。先日のチラシで6800FF位だったような気がします。
「困ったことがあったら駅に行け」
ヨーロッパ放浪歴の長かったバイト先の上司が常々語っておりました。駅に行けば両替も出来る、いつでも食い物を売っている、インフォメーションがある等々。確かにそれは言えているかもしれないと思ったりしている。
今朝のRERにてC.D.G-Etoileで私の前に座ったオジさん、実に表面に現われていた毛がことごとく金髪であった。もともと金髪は北欧系民族であるから、パリ市内は案外と金髪の人が少ない。この人も顔だちは冬季オリンピックのノルディック競技に出てきそうな感じであったから、やはり北欧産だと思う。
頭髪だけでなく、髭はおろか眉毛、睫、手の甲を覆っている毛もオール金髪。特に睫までたわわに実った麦畑のような金髪だったので、私は一瞬ほこりが積もっているかと思ってしまった。いかに人種のるつぼとはいえ、ここまで徹底した総金髪の人には初めて出会ったやうに思う。
パリに住み始めた当初は人の顔の雑多さに驚かされたものであった。ところがそれに見慣れてしまうと、今度はオペラ座界隈で見かける日本人の顔が確かに同じに見えてしまう。在仏僅か8ヶ月の私にしてかような感覚を抱いてしまうのだから、日本を初めて訪れるパリやNYの市民がしばしば語る「日本人、皆同じに見える」という気持ちが分からないでもないような気がしてきた。
「江戸っ子」はフランス語で何と表現するか? 今日のFIGAROのスポーツ面に、
..., qui devrait attirer des milliers de Tokyoites ...
なんぞと出ておりました(出所:FIGARO大学版13頁)。
同じ質問をThomasにしたところ、彼は笑ながら「Tokais」と答えた。むろん、これは同音語「toque:頭のおかしい」に引っ掛けたジョークであります。この手の引っ掛けで有名なものには英語の「kinky:((英俗))変な」がございます。かつて私のアメリカ人同僚がTVの天気予報で初めて「近畿地方」と耳にしたとき、思わず大爆笑してしまったそうです。「近畿*本ツーリスト」も同様だったそうですが、この会社、ロンドン支社などでもやっぱり「Kinki...」なのだらうか。
パレロワイヤルにある日本書店「JUNKU」が移転し、1月30日から新装開店となりました。新しい場所は旧店舗から歩いて3分ほどのところにあり、最寄り駅はメトロ7番ピラミッドになるのではないかと思われます。
たまたま学校を早く出ることができたので、今日早速行ってみました。売り場面積は旧店舗に比べてかなり広くなっています。地階、地下と2層になり、総面積は6倍くらいになったのではないでしょうか。地下はコミック及び日本製ビデオ及び漫画専門コーナです。コミックの充実ぶりは驚くほどで、東京の割と大きな書店でもあそこまで豊富な品揃えの所は少ないでしょう。コミックファンの私には目の毒です。現に今日は「ガラスの仮面(39)」が出ているのを発見し、あと8日待てば日本で安く帰るのが分かっているのに、結局買ってしまいました。
因みに値段の方は40.50FF、新装開店割引価格で36.25FFです。日本価格が390円ですから、ほぼ倍といったところ。尤も在庫期間と輸送費を考えたら安いと言って良いでしょう。これだけコミックを集めたということは、フランスでもコミック需要が大きいということでしょう。実際、日・仏のがきんちょ達がけっこうたむろしておりました。
って、本当に何も見るべきものがない、と言ったらちと言い過ぎかもしれません。でも、これって私の偽らざる本音。
私はかつて天文学者を目指していたこともあるので、星空なるものはそれこそ何千回となく眺めております。そんなわけで、北半球の空はすっかり見慣れてしまい、パリで目にする星座も東京と変わりありません。見える星の数も東京と大差ない(空気はパリの方が汚染されているでしょうが、ネオンの数が東京より少ないので、トータル公害・光害度は同程度と思われる)。
やはり印象的な星空は、北半球住民にとってはオーストラリアなど南の方のものでしょうか。ただ、星を見慣れている人ほど南半球ではとまどうのも事実。まず星の動きが逆。北半球では、天の極(天の北極。北極星付近)を中心に反時計回り。南半球では反対に極を中心として時計回り。だから、私のやうに夜ドラでは星を目印にしているような者にとって、星の動きが全く逆なので困ってしまう。あと、見慣れた星座が皆逆さまになってしまう。オリオン座なども見事に頭が下を向いております。
ここ2週間ほど最高気温が12度前後あったパリも今日は妙に冷え込みます。東京だと今頃は寒くても青空が広がっているのでしょう。どんよりした日々に身を置いていると、東京の冬がたまらなく恋しくなります。
2月に入ると学校の後半に突入である。バレンタインデーのあたりに二週間の休暇があったので、それを利用して日本に一時帰国した。もちろん観光とか気分転換とかが目的ではない。日本にいる友人に頼み、いくつかの出版社を紹介してもらったのである。この時点ではまだ会社を休職中という身分であり、94年6月までは復職の権利を持ってはいたが、気持ちの上では休職期間満了とともに退職するのは既定路線であった。そうである以上、退職後の食い扶持について、そろそろ布石を打っておく必要があったのだ。
最初から出版関係の仕事で食っていこう、と考えたわけではない。連絡を取った友人というのがいくつかの出版社とつきあいがあり、単行本や連載のかたちで評論を書かせてもらい、それだけでも十分に食っていけると話していたのだ。この友人は、その時点で休職中だった会社の一年先輩である。おなじ部署になったことはないが、お互いに残業が多く、しかも部署が隣だったので、アフター5の社内でしょっちゅう顔を合わせていたのだ。この会社は社員の2割ぐらいがやたら残業が多く、おなじフロア内の残業常連者のあいだには、一種の連帯感のようなものさえ芽生えることがあった。彼とは話があったのと、東京での住まいがすぐ近かったことから、在職中から親しくさせてもらっていた。
わたしが会社を休職してまでフランスに留学しようと決めた過程において、じつは彼の存在は大きかったのである。彼も留学経験者であるが、わたしの休職以前に会社を退職していた。仕事がイヤになったとか、上司と折り合いが悪いとか、という理由で辞めたのではない。むしろ、仕事が好きで好きでたまらないので、もっといろいろな可能性を探るために、いったん会社を「卒業」したのである。若気の至りが許される年齢のうちに、いろいろと思い切ったことをやってみたい、とも語っていたと思う。彼の言動にはもとから共感することが多かった。こういう先人の姿を見て、わたし自身、「いつかやりたい」と思っていたことは、「いま」やらなければダメなのだ、と再認識したのだ。
この一時帰国中に紹介してもらった出版社からは、さいわいにしていきなり連載を任されることになった。別の出版社では、単行本の企画を前向きに検討してもらえることになった。
(2006.3.1記)