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95年3月の日記は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラムロマンス語派館」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。
当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。
乾燥したフランスパンの使い道は、こりゃもうヌカどこです(笑)。棒のようになったパンを粉々にくだき、それをビールでひたひたにする。ペットボトルのフタをちょいと加工して、このにわかヌカどこをいれる。で、ニンジンやらキュウリをいれて、ヌカミソ漬けのできあがり。これぞ在仏日本人の生活の知恵。
固くなったパンの正統な利用方法は、オニオングラタン・スープでしょう。もちろん、こまかくしてクルトンにするもよし。
北欧神話は漫画的でおもしろい。ハイライトの「神々のたそがれ」に向かってずしずし展開する迫力が魅力ですね。基本構成はギリシャ神話とおなじで、オリンポスの神々のようなキャラが主役。ゼウスに相当するのがオーディン、ポイボス・アポロンに相当するのがバルドュール。
北欧神話で重要な役柄を演じるのがロキと呼ばれる悪神です。最後に世界を滅ぼすのが、このロキとミッドカルドの大蛇、フェンリスの狼。神さまたちはいっときこの大狼を縛りあげるんですが、そのときの綱は「世にも不思議な6つのもの」で作ったとされている。材料は、女の髭、猫の足音、魚の溜息、岩の根っ子、熊の腱、あといっこは風のなにかだったかな。
神話を好きなのは、けっこうどろどろしたドラマに惹かれるから。オイディプスの悲劇なんて、わくわくしながら読みました。
以前はテレビでBalladur の真似っこが流行ってました。Balladur と Rocard の架空論戦ってのが、この種のパロディの定番でしょう。そこに Tonton が口挟むと、わけわかめな状態になるけど。FMの France Inter で年中やってますね。
Balladur 人気ってのは、ほんとに原因不明でした。直前二人の首相(サラダ菜と自殺したひと)が ENA出身じゃなかったから、なんて説明もあるんだけど。強いていえば「人気があるから人気が出た」って気もします。
以前、舛添氏が「フランスの政治家は演説がうまくないと支持されない」って朝ナマかなにかで指摘してたけど、この点ではやっぱ Chirac がすごいと思う。わしらガイジンが聞いてても、あの説得力のある節回し、それに安心感を抱かせる語調はひきつけられてしまう。
cafe のコーヒーは当たりはずれがすくない。ただ、場末の brasserie だと、たまにとんでもない大スカがある。あと、レストランの食後 cafe でも、えらく焦げ臭いのが出てくることがあります。
しかし、ヨーロッパに住んで最初に好みがかわるのはコーヒーです。かつてアメリカンを水がわりに飲むのが好きだったけど、いまはもいう濃いいやつに限ると思っちゃってます。
考えてみたら、日本の安全神話って、単なる偶然の結果って気がするこのごろです。たとえば長者番付ひとつにしたって、ヨーロッパでこんなのやったら誘拐シンジケートが大喜びするだけです。
フランスやアメリカの治安当局の取り締まりは、日本とは比較にならないくらいすごいらしい。電話の盗聴なんかも当然だそうで、そのシステムのない日本の公安当局はFBIなどから極秘情報をもらえないそうです。ただ、フランスでもアメリカでも、ジャーナリズムが常に行き過ぎをチェックしているんですよね。その点、日本のマスコミはなんでもかんでも文句を言うだけ、という点が怖い。
Boulevard de Port Royal をうちからモンパルナス方面にバス停三つ分ほどいくと、畳屋さんがある。畳屋さっていうよりも、「日本寝具店」といったほうが正確ですが。フランス人の一部には畳がベッドとして好評らしい。ふつーのベッドの上に畳を置いて、その上に寝るんですね。BHVにもあったかも。畳は tapis de tatami といってたと思う。
サリンの事件は各紙とも一面トップです。こういう事件はどの都市でも絶対に起こりうる。地震と違って「昨日は東京、今日はNY、明日は巴里」という可能性がほんとうにある。しかもテロは誘発されやすいから怖い。いまアメリカが大騒ぎみたい。フランスのラジオでも連日詳細なニュースを流しているし。
そのサリン事件ですが、きのうの Bay FM では新興宗教団体の教祖名まで含め、詳細な報道がなされていました。「オウム真理教」はきのうまでだと「secte de la verite supreme」、きょうは「あうーうむ」というよう表現しています。
この種の事件は、世界中のあらゆる大都市でおこりうるという意味で、阪神大震災以上の衝撃を世界中に及ぼしている、といえるでしょう。ことが天災ではないから。アメリカのCIAが重大関心を示したのも当然でしょうね。
化学・生物兵器はとにかく怖い。核兵器の脅威とかいっても、これを開発するのには膨大なコストと技術力がいる。でも、CB兵器だと殺虫剤を作る技術力があれば開発できる、なんていわれていますからね。
が巴里でアパートを探し始めたとき、在巴里十年という日本人女性がいろいろ相談に乗ってくれました。彼女は「巴里に住むなら絶対に便利なところに住むべき」と強調していました。予算ギリギリまで高望みしたほうがいい、っていうわけなんです。いろいろと物件も紹介してくれたんですが、すべて5区・6区か、8区の中心部(凱旋門の
近くね)ばかりでした。
で、やっぱこれは事実だと思いました。ちょっと買い物にムフタールへ、なんて気分は、本当に絵に描いたような la vie parisienne です。たしかに巴里の中心部に住むためには、いくつか犠牲にせねばならんことがある。当然ながら日当たり良好なんて望めない。大通り沿いは車の騒音がうるさいし、排ガスがかなり臭い。安めのアパルトマンはエレなしなんで、上の階だとのぼり降りがたいへん。郊外なら Carrefourみたいな安い Grande surface があるけど、巴里中心部だと物価が高い。
とはいいながら、高円寺あたりの家賃で原宿に住める感覚があるわけで、こりゃやっぱ応えられません。たぶん、いまのところを離れたら一生こんな贅沢な環境には住めないでしょう。
きのうはこのアレジ&ゴクミをたしかめるために、ミニテルの Marlboro Racing Serviceを探しまくってしまいましたがな。でもさすがにシーズン・イン寸前とあって、ゴシップ関係の情報はなかったけど。
アレジのうわさなら、L'Equipeの一面にだって載りかねない。でも英語の苦手なアレジちゃんは、どうやってゴクミを口説いたんでしょうね。まさか同時通訳同伴のおつきあいってこたねーよな。でも、ブラジルにいるったら、F1開幕戦ってことだよな。てことは、やっぱまじなのかな。
おばさんは「tata」ともいいますよね。まえに友人の家でビデオを見せてもらったとき、
―― Ma tata!
―― Ta tata?
という、はた目(はた耳?)にはアホのような会話がありました(笑)。
水道代はたいてい家賃にはいっている(固定料金)はずなので、実感としては「水はタダ」って感覚です。電気代は銀行の口座引き落としを利用する場合、毎月固定金額を支払って、年に一回、精算する。固定金額は、最初の年は家の広さに応じたモデル料金体系で仮設定され、二年目からは前年度実績にもとづいて算出されます。うちの場合、月々500フランぐらい。まあ、ガス代がはいっていないことを考えれば、光熱費は日本より多少安いぐらいってとこ。
うちのアパートでも、ガスをいれてないところが多いみたいです。日本と違って、個別に入れる入れないと決めているんですね。でもたしかプロパンだったんじゃないかな。まあ、揚げ物とかやるには、やっぱガスがあったほうがいい。でも、巴里市民は外食の機会がおおいから、案外とガスなしでも不自由しないみたいだけど。
暖房は温水を循環させるか、個別に電熱パネルでやるか。給湯も集中的にやるか、個別に Chaud-eauっていう温水器を入れるか、ですね。ちなみにフランスの標準産業分類には、「温水供給業」というのがあります。もっとも、細分類に「エールフランス」ってのを見つけたときにはぶっとんでしまった。エアフラって産業分類かよ(笑)。
きょうもう一度「おかけになった電話番号は……」を聴いてみたのであった。別バージョンがあるかと思って。そしたあ、前にアップしたのとちょっと違う箇所が今度はありましたです。
Le numero que vous avez demande n'est plus en service
actuellement. Nous regrettons de ne pas donner suite a
votre appel.~~~~~~~~~~~~~~
donner suite a で「実現する、要求に応える」なんて意味があるのね。知らなかったぞ、これは。
フランス人のケチぶりは、なかなか複雑(capricieux)です。だって、照明はぜんぶ白熱電灯かハロゲンだから、すごい消費電力なのね。たとえばうちが夜消費している電気は、居間のハロゲンが500W、寝室、廊下、台所の電球が各75W、これがつけっぱなしでトータル725Wです。節電しようと思ったら、蛍光灯に限ります。ただ、フランス人はこの光線が嫌いみたいね。
うちには60Aきてるんだけど、230Vだから、日本でいえば140A来ているのと同じ。これは小さな工場の水準ですね。
ミニュットリは、はっきりいって不便でしかも無駄だと思う。要するに、こまめに消す習慣がないってだけ、きっと。たしか国民一人当たりのエネルギー消費量は、日本の7割増しとかぐらいなんじゃないのかな。省エネに関しては、やっぱ日本は頑張ってる。アメリカなんかひでーらしい。
フランスのコミュニティは、資格社会でもある。ただ、その「資格」とやらは、たいてい取得できるものであって、人種差別のようなニュアンスとは大幅に異なる。このあたりは「区別はするが差別はしない」ということ。
正直言って、ぼくは学歴でトクしました。いまのアパートの大家さんは、ぼくが同じ grande ecole の生徒だとわかったとたん、対応がまったくかわりました。一度うっかりと家賃滞納しても文句もいわれなかったし。先住者は最初から三ヶ月分の depotを要求されたらしいけど。
銀行の口座開設だってそうです。このあたりは日本以上に学歴のご威光はは大きい。フランスは学校によって初任給からして違います。学校の Hit-parade は「出身校別初任給ランキング」として発表されますから。
資格社会ってのを強く意識するのは教授や講師との会話ですね。教授どうしはみんな tutoyerです。学生どうしもそう。だけど、教授と学生は vouvoyer です。が、ひとたび博士号をとると、tutoyer にかわります。このあたりは「同一階層の相手には tutoyer」という原則があるように思う。
微妙なのは、3e cycleの学生と enseignant-chercheur クラスの人たち。個人的に親しい場合、プライベートではほぼ tutoyerです。ぼくの師匠である Mme.PIVETTE Muriel とは、普段は完全に tutoyerです。呼ぶときも「Muriel」「Massa」だし。
ボスの M.PALMER Michael がまざるとき、彼女とボスは tutoyerだけれど、ぼくとは vouvoyer です。もちろん、このときぼくのほうからも Muriel とは呼ばずに、Mme.PIVETTE って呼んでます。で、ボスが消えるとすぐに「Muriel, tu vois...」です。
ミッテランの隠し子でマスコミが騒いだのは、アメリカと日本だけと言われてます。当のフランスでは、おおむね「Et alors?」って反応だったみたい。
宇野元首相のゴシップは、フランスの一流といわれるジャーナリズムであれば、まず無視したことでしょう。これがなにか諜報とか大規模な贈収賄にでも関係していれば別ですけどね。単なる下半身ネタであれば、そりゃ宇野家のプライベートな問題だって。
要するに、公の生活と私生活はまったく別問題ってことですよね。フランスはとりわけ「政治家も技術職」って考えが強いから、このあたりの割り切りははっきりしているように思うんですよ。有権者のほうにしても、重要なのは政治家のゴシップではなく、自分たちの税金の使い道でありましょう。ゴシップで荒れるアメリカや日本よか、ずーっと健全な気がしてしまうのであった。
capricieus って単語は使いでがある。「機械が調子悪い」なんてニュアンスにも。グラースの香水工場で eau mineraleの自販機が調子悪いとき、従業員がひとこと「Capricieus!!」って言ってた。
天気がかわりやすいってのにも、capricieusがつかえます。
朝8時頃の RER A 線の各駅にいけば巴里で駅のアナウンスを聞ける。いちばんはでにやっているのは、Chatelet-Les Halles と Charle de Gaule-Etoile でしょうい。
Le train entre la gare.(電車がまいります)
Laissez descendre avant le monte.(降りる方が優先です)
Veuillez degager la porte, svp.(ドアの前を広くお開けください)
Montez plus.(いま一歩おつめください)
Attension a la fermeture de la porte.(ドアが閉まります)
Ce train est en destination de CERGY.(この電車はセルジー行きです)
日本のアナウンスはちとやりすぎ。酔っぱらいの面倒だってみすぎていると思う。駆け込み乗車で怪我したらそりゃ乗客の責任だし、酔っぱらって凍死でもすりゃあ、そりゃ自業自得だと思う。
アラブ人とつきあいがおおいので、宗教に関する話題は話します。いつも彼らに主張するのは、「日本では神の信仰と宗教の信仰は別である。森羅万象に神意が存在すると考える」ということ。これ、自然信仰の基本ですから、わりと納得のいく《原理》なんですね。
多神教というものに対しても、「あ、ギリシャ神話と同じね」という反応がおおい。で、ここぞとばかり、ギリシャ神話と日本神話の共通性を出してみたりする。オフフェウス神話、アンドロメダ神話あたりが定番です。
議論で注意しなければいけないのは、《原理》の違いは妥協のしようがない、ということ。これはお互いに尊重するっきゃない。《原理》の違いを笑ったりすると喧嘩になります。
反対に、《現象》は説明しなければいけない。なぜそういうことになるのか、と。われわれがおこないがちなのは、説明を避けるがゆえの「日本人特殊論」ですね。だいたいどの民族もそれぞれが特殊なんだから、「われわれは特殊だ」という主張は、単なるコミュニケーション拒否にしかならない。特殊じゃないと信じているのは、アメリカ人だけでしょう(笑)。
フランス人やアラブ人だと、天皇制の歴史的、文化的、政治的位置づけに興味のある人がおおい。説明のポイントとしては、フランク王国や神聖ローマ帝国とローマ教皇との関係と比較するといい。権力発行機関という役割で共通していますから。
本なんかを見ると、「幕府」が「pouvoir gouvernemental」で、「朝廷」は「pouvoir religional」なんて対比をしてますね。
外国に住みはじめると、だいたい三ヶ月で急速に饒舌になる。で、とにかく顔面の筋肉が疲れました。まじなはなし。日本語だと唇だけでごまかしがきくけど、フランス語だと頬から耳にかけた筋肉を酷使します。逆に、ちょっと発音に自信がないと思う人は、オーバーなくらいに顔面をひきつらせるといい。あとは、いわゆる communication non-verbaleでも顔の表情はポイントだか
ら、これにも筋肉を使う。
外国語を喋るときというのは、ある程度性格が変わるそうです。バイリンガルとかを除けば、母語と外国語とで対応する大脳の箇所が違うからなんですって。だから、日本語だとおとなしいひとが、英語やフランス語だと攻撃的なんてケースはありうるでしょうね。
おとといの France Inter のニュースによると、Euronet は AOLと提携して、大々的にインターネットのマルチメディア・サービスを開始するそうです。ということは、当然ながらASAHIネットのように W^3サーバーが目玉でありましょう。
一方、世界最大のパケット交換網 TYMNET が4月からやはりインターネット接続サービスをはじめます。詳細は不明だけど、どうやらダイヤルアップIP接続みたい。「IIJよりも安い」というはなしですから。
個人的にはインターネットはまだ「社用族ネットワーク」だと思います。それに、まじで利用しようと思ったら、アナログ電話線ではもう限界でしょう。個人で利用するなら ISDN しかないんじゃないかな。
フランスのCMは、チラシの延長という雰囲気のものがおおい感じがする。つまり、商品の説明をしまくるって感じ。だけど、ポスターとかはなかなかいい。いま、巴里市内のバス停にはどっかのプレタポルテの巨大ポスターが掲示されてます。これが五人の女性ヌードの、首から下の部分です。ヘアの部分にちょうど帯がはいってメッセージが書かれているんだけどね(笑)。
日本ではたしかテレビ局の自主規制で、おっぱい丸だしCMはないですよね。フランスだとこういうのがあるんですよね。どっかの石鹸で、なぜか「さくらさくら」をBGMにしたヌードCMがありました。
1月の阪神淡路大震災に続き、3月の地下鉄サリン事件もフランスの全新聞が一面トップで報道した。しかし、衝撃の大きさは大震災以上である。自然条件に左右される地震に対し、サリン事件のような出来事は、パリでも十分に起こりうるからだ。この事件は多くのテロリストに一つのヒントを与えたであろう点で、フランス政府にとって他人事ではないのである。実際にこの事件後、メトロの駅は一時的に警戒が厳しくなったような気がする。
それにしても、阪神淡路大震災からそれほど時間が経過していないのに、「10年に一度」クラスの大事件が起きてしまうのだから、この年は日本にとって本当に厄年なのかもしれない。
地下鉄サリン事件の際にも「水と安全はタダ」といった話しが出ていたが、きちんと水道代を払っているわけだから、なんで水までタダという発想になるのか不思議だ。たぶん、井戸水を使っていた時代の名残なのだろうけど。その点、パリでアパートを借りていると、上下水道代は最初から家賃に含まれているので、いちいち水道代を払うことがない。こちらのほうがよほど「水はタダ」という感覚になりそうなものだけど、ミネラル・ウォーターを買う習慣があるので、そうはならないのだろう。でも、フランスの水は硬水なのでまずいといわれるけど、東京の水よりもよほどおいしいと思う。冷やして飲めばそれほど抵抗はないし。
(2006.2.24記)