「月刊Online Today Japan」(ニフティ発行)1994年5月号掲載
江下雅之
フォーラムのオフの席に、入会まもない新人がやってくる。
当然そのひとは、どの顔が誰なのかを知らない。それでも普段読むメッセージの雰囲気から、なんとなく書くひとのイメージができあがっている。
十人前後のこじんまりとしたオフだと、「私は誰でしょう?」という遊びができる。あまり当たることがないので、メッセージのイメージと本人との顔のギャップを周囲でも楽しめる。
ところで外国語フォーラムの中に、Soleil Levant という会議室がある。ここはフランスのパソコン通信 CalvaCom とメッセージ交換を行う場だ。フランスでアップされたメッセージはこの会議室に転載され、ここにアップされたものはフランスに転載される。
転載といっても、すべては藤野さんという方のボランティアで行われている。たいへんな作業なのだが、すでに何年間もこの活動を続けていらっしゃる。
フランス国内はミニテルと呼ばれる通信サービス――日本のキャプテン・サービスに相当する――が普及しているため、パソコン通信人口はそれほど多くない。CalvaCom は最大規模のネットワークだが、会員数はニフティの十分の一にも及ばない。
ただし、ニフティとメッセージ交換を行っている会議室はなかなか盛況で、何年も続けて活動している常連も少なくない。
そのなかの一人と、昨年の夏、ひょうんなことから親しくなった。
彼とは月に一度くらいは食事をともにするし、日本から誰か Soleil Levant 会議室のメンバーがやってくると、ミニオフをするようになった。
なまじ何人かの顔を覚えると、彼の方もほかのメンバーの面を知りたくなったらしい。それでぼくのところにも、誰それの写真はないのか、という注文がくるようになった。
たまたま外国語フォーラムのオフで、Soleil Levant 会議室の常連が多数集まる機会があることを知った。そこで「私は誰でしょう?」遊びを思い出したのだ。
さっそくオフの幹事さんにメールを送り、全員の写った写真をぼくのところに送ってもらうことにした。
写真が届いてから、紙を重ねて写っているひとの輪郭を書く。手紙に「日本からの挑戦――ただし、これは心理学的に貴重な実験である云々」など、いかにもフランス人好みの屁理屈を書きいて彼に送った。回答は Soleil Levant 会議室にアップするように、とも書き添えて。
月刊誌、ニフティ/発行、1987年創刊
ニフティ社の広報誌として創刊されたが、後に数回リニューアルを行い、この誌名の雑誌は現在存在しない。
有料の月刊誌であったが、NIFTY-Serve会員には無料で送付されていたので、ピーク時の発行部数は100万部を越えていたはず。ページ数は少なかったが、すがやみつる、武井一巳といった、この分野の先駆者による連載が創刊当初から掲載されており、記事はかなり充実していた。
その後、全会員への発送をやめて部数が落ち、リニューアルによってNIFTY-Serveのナビゲーション誌への転身をはかった。また、通信ネットワークの主役がパソコン通信からインターネットへ移行したのにともない、さらにインターネットを中心とした誌面に衣替えしている。