「月刊Online Today Japan」(ニフティ発行)1995年7月号掲載
江下雅之
本誌6月号の特集『世界に翔ぶ』の拙稿で、「国際データ通信コストが3年間で20分の1に」というような部分があったと思う。しかし、事態はその後わずか一ヶ月のあいだに、遥かに進んでしまった。
今年の2月以降、フランスのネットワーク環境が激変している。たとえば以前ここに書いた原稿で、フランスから CompuServe に接続するとき、平日の午前8時から午後7時まではプライムタイム追加料金がかかると紹介した。それが2月5日から廃止された。
1月に締め切りのあった単行本で、ぼくは「CompuServe からの telnet 接続はまだできない」と書いた。が、おなじく2月からこのサービスが始まってしまった。ユーザーとして嬉しいことなのだから、ぼやくことはまったくないのだが、校正には間に合わなかった。
とにかくインターネットをめぐる状況が、月がわりで変化しているのだ。ぼくははじめのうちこそ ftp ぐらいにしか興味がなかったので、CompuServe で十分に満足していた。ところが、あの武井さんが WWW にハマっているという話しを某所で聞きつけて、どんなものかいなという関心が高まった。
友人から、フランスではFranceNet がいちばん安いダイヤルアップIP接続を提供している、という話しを聞いた。20時間分の使用料を前払いするオプションがいちばんおとくで、税込み 900フラン、1分あたり日本円換算で13円弱だった。
さっそくここに申し込み、手元のパソコンのセッティングを変更した。WWW を利用できるようになったのが4月最後の週。そしてこのころ、CompuServe の大幅値下げとダイヤルアップIP接続開始のニュースを知ったのだった。
5月2日から大幅な低料金が適用され、月額基本料金を 24.95 ドル払えば20時間までインターネット・サービスが使い放題だ。それ以上使用しても、1.95 ドル/時間という低料金が適用される。
フランスからインターネットを利用しようと思ったら、CompuServe をのがベスト、という状況になった。FranceNet に比べ接続状況はあまりよくないし回線もおそいのだが、低料金の魅力には勝てない。
ところが、である。
ついさっき CalvaCom に接続したら、「6月からインターネット利用料金大幅値下げ!」というアナウンスがトップメニューに出ていた。月に100フラン、約1,700円を払えば、インターネット・サービスを時間無制限で利用できるというのだ。年会費が別途300フラン必要だが、CalvaCom のパソコン通信サービスを利用しているぼくは、もうすでにこの分を払っている。単純に100フラン/月を払うだけで、時間を気にせず WWW を利用できるのだ。
ライバルの CalvaCom がこういう値下げをすれば、当然 FranceNet も対抗するだろう。それに、近々 American Online が本格的に欧州市場に進出し、ダイヤルアップIP接続を開始するという話しもある。そうすればまた、CompuServe がなにかをやってくれるだろう。
なんだか目まぐるしい。目まぐるしいのだが、値下げだけは確実に進んでいるようだから、黙っていればありがたいことになりそうではある。
とはいえ、あっちが値下げすればこっちも値下げという具合なので、いつまでたってもIDの整理ができない。FranceNet に加入したとき、一瞬 CalvaCom はやめようかとも思ったのだが、こんどは FranceNet を削ったほうがいいような状況になってきた。とかいいながら、来月はさらに AOL のIDが加わっているような気がする。
インターネット利用者数が激増しているらしいが、その実態は、値下げ競争のなかで一人のユーザーがあちこち加入しまくっているためなのでは、とも思ってしまう。
月刊誌、ニフティ/発行、1987年創刊
ニフティ社の広報誌として創刊されたが、後に数回リニューアルを行い、この誌名の雑誌は現在存在しない。
有料の月刊誌であったが、NIFTY-Serve会員には無料で送付されていたので、ピーク時の発行部数は100万部を越えていたはず。ページ数は少なかったが、すがやみつる、武井一巳といった、この分野の先駆者による連載が創刊当初から掲載されており、記事はかなり充実していた。
その後、全会員への発送をやめて部数が落ち、リニューアルによってNIFTY-Serveのナビゲーション誌への転身をはかった。また、通信ネットワークの主役がパソコン通信からインターネットへ移行したのにともない、さらにインターネットを中心とした誌面に衣替えしている。