「月刊Online Today Japan」(ニフティ発行)1994年8月号掲載
江下雅之
最近、オンライン・ショッピングを利用することが多い。コンピュサーブやニフティで「個人輸入」をおこなったり、ミニテルの通信販売を利用するのだ。
コンピュサーブやニフティのE-MALLは、クレーム先がはっきりしているから安心だ。その点、ミニテルだとトラブルが生じたとき、電話や手紙でクレームをつけなければならないことが多い。
つい先日、ミニテルでCD-ROMドライブを注文した。それが無事に届くまで、手持ちのメディアを総動員した感じだった。
注文した店は、Mac Univers という雑誌で見つけた。学生や研究者向けの安売り店で、CD-ROMドライブのセールをおこなっているところだった。いまの円高・ドル安・フラン激安という為替だと、18.6パーセントの間接税を含めても、アメリカ国内価格よりも安かった。
時間が夜中だったので、ミニテルで注文することにした。
指定チャネルに接続する。表示メニューから、《購入》を選ぶ。次いで、カタログ選択画面が現れる。
ところが、目指すCD-ROMドライブが見つからなかった。《CD-ROM》という選択肢はソフトだけ。《周辺機器》はプリンタやモデムばかりだった。
残りは《本体》と《ソフト》「ハード・ディスク》だけだった。どうやら特売CD-ROMドライブはリスト・アップされていないものとあきらめかけた。
接続を切るまえに、ものは試しで《ハード・ディスク》を選んでみた。フランス人のことだから、ひょっとしたらごくアバウトに……と思ったのだ。
CD-ROMドライブは、リストの先頭にあがっていた。
注文の手続きは、パソコン通信とほとんど同じだ。ただし、支払いは小切手を使う。フランスの通販ではそれが一般的だ。
注文データの入力が終わると、注文番号、小切手の郵送先などが表示される。それらをメモしてから、端末を落とす。
小切手は翌朝投函したので、早ければ注文の二日後には注文品が届くはずだった。
が、五日たっても届かなかった。
仕方がない。店に電話でクレームをつける。要件を告げると、クレーム対応係から折り返し確認の電話を入れるとのこと。対応はしっかりしていそうだ。ひと安心。
が、折り返しの電話は来なかった。
その二日後、再度クレームの電話を入れる。対応責任者は不在とのこと。折り返し電話しますから――。
この日も電話はなかった。
注文から十一日目、四度目のクレーム電話をかけた。こんどは、クレーム対応の責任者が出る。
ひととおり文句をいう。相手はよどみない口調で応えてくれる。単に雄弁なだけなのか、それとも、よほどクレームが多いのか。彼の忙しさから察すると……。
結局、電話した時間が遅すぎて、注文の状況を照会できないという。
「明日の午前中に電話しますから」
が、翌日の午前中、電話はかかってこなかった。こちらから電話をしてみると、彼は午前中、外出とのことだった。
こんどはファックスでクレームの手紙を送る。そして午後、あらためて電話した。
「ご安心ください。二日後に届きますよ」
五度のクレーム電話およびファックス攻勢で、ようやくこのひとことをえた。そして二日後、なんとかCD-ROMドライブを手に入れることができた。
ちなみにこの店は、うちからバスで五分の距離にあることが後からわかった。オンライン・ショッピングは、店の場所を確認してからおこなうべし。
月刊誌、ニフティ/発行、1987年創刊
ニフティ社の広報誌として創刊されたが、後に数回リニューアルを行い、この誌名の雑誌は現在存在しない。
有料の月刊誌であったが、NIFTY-Serve会員には無料で送付されていたので、ピーク時の発行部数は100万部を越えていたはず。ページ数は少なかったが、すがやみつる、武井一巳といった、この分野の先駆者による連載が創刊当初から掲載されており、記事はかなり充実していた。
その後、全会員への発送をやめて部数が落ち、リニューアルによってNIFTY-Serveのナビゲーション誌への転身をはかった。また、通信ネットワークの主役がパソコン通信からインターネットへ移行したのにともない、さらにインターネットを中心とした誌面に衣替えしている。